【音像の定位1】位相をいじる技術

 
きさ:今日話したいのはね、この前の話しの続きなんやけど…
 
つる:ワンポイント録音と、暗騒音の話しの、続き。
 
きさ:うん。
   「音像の定位」っていうAudio的な言い方があるねんけど、
   「音場」と「音像」っていう言葉があるねん。
 
   「音場」の中にどういう「音像」が成り立つか、
   それが問題やろ?
 
   僕は「音場に音像が含まれるもの」として考えてるんやけど、
   どうも「音場派」と「音像派」に分かれるみたいやねん。
 
つる:えっ?別れちゃうんですか?
   音楽を演奏したその空間…場所の中に演奏者が立つ…
   「音場」のなかに「音像」が立つ。
 
   そういう「全部」で音っていう情報だと、
   私も思ってたんですけど。
   分けちゃうんですか?
 
きさ:「音像」って言うても、
   立体的になモノではなくて配置を指すみたい。
 
つる:んんん?
   「立体的」に聞こえるモノは
   また別の…業界用語が、ある?
 
きさ:いや、ないよ。(笑)
   音像の立体感では無くて、
   音の立体的な配置を指すみたいやねん。
 
   「シンバルの配置が立体的に聞こえる」
   っていう表現があるんやけど、
   シンバルの形とか、厚みだとかが、
   見えるように聴こえるのとは違うみたいやねん。
   シンバルの配置が立体的に聴こえるという意味らしい。
 
つる:…?
 
きさ:…調整卓って知ってる?
   録音スタジオによくあるんやけど…
   スライド式のボリュームが沢山付いてる大きなテーブルみたいなヤツ
 
つる:あ!
   よく音楽PVとか
   ドキュメンタリー番組とかで見た事あります。
   こう、い〜っぱいつまみがついてるやつ…
 
きさ:それそれ。
   その調整卓で、
   音像がどこに定位するかっていうのが、いじれるねん。
   右から100%出してしまううと、右でしか聞こえなくなるけど、
   右から80%で、左から20%の音量に調整できたら
   この辺に音があるように聴こえるって云うのは想像できるやろ?
 
つる:ああ〜…
 
きさ:ビートルズの出始めのころ…大体1960年代の半ば頃
   ステレオっちゅーのが広がってきたんよな。
   ステレオ録音っていうのは面倒くさいから
   音響室…レコーディングルームで
   ソースを「右」「左」って分けててん。
 
   ほんで、それは全部モノラルやねん。
   右から聞こえるか、左から聞こえるかに分けてただけ。
   「左右に分かれたでしょ?ステレオです!」
   って言うてた時代があるわけ。
 
つる:ふ〜む…
 
きさ:昔のレコードで…
   今、ricoちゃんが集め出してるジャズのレコードなんかは
   右か左かどっちかに音が散ってるのがあるよ。(笑)
 
つる:そうなんですか…
 
きさ:段々ミキシング卓…テーブルが高性能になってきて、
   簡単に交差できたり配置したりできるようになってきてん。
   その後、位相を少しいじくれる技術が出てきた。
 
   位相をいじると、音がビュンビュン回るねん。
   部屋の中をね。
 
つる:部屋の中を回る…?
   それは…録音した時は、
   部屋っていう「音場」の真ん中に人っていう「音像」が居たけど、
   位相をいじるとその部屋の中を
   人がビュンビュン回っているように聞かすこともできる…
   …つまり「したいように」できるってことですか?
 
きさ:ウン。
   左右の移動だけじゃや無くて、
   前後に移動させることができる。
   もっとも、飛び回るのは3Dじゃなくて2Dやけどね。
 
   …例えば、宇多田ヒカルのTAXIの曲知ってる?
   traveling? 古いねぇ…(笑)
 
   未来のスクーターみたいなんに乗って
   ビュンビュン回るPVがあったけど、
   ちゃんとしたシステムで聴くと
   ほんまに部屋の中をビュンビュン飛び回って聞こえるよ。
 
   ほんで、それを再生する時、
   高くても位相が良くないシステムでは、狭い範囲を前後に動くだけ。
   1m位の幅でビュンビュン飛び回る。
   ハエみたいやで…笑うから…(爆)
 
   でも、SPとかAMPとかをGe3的にチューンしていくと、
   飛び回る範囲が広がりよる。
   狭いよりは広い方が良いでしょう。と思ってチューンに励んだね。
 
   「飛び回る範囲が狭くなる、広くなる」テストに
   あのCDはよう使ってた。
 
つる:ああ…使ってらっしゃいましたね。
 
きさ:そんな風に、位相がいじれるようになってきた。
   …だからTVのCMなんかで
   そのへんからヒュッと音が出てくる感じがするのあるやろ?
   あれは位相をいじってるねん。
 
つる:ふむ(頷)
 
きさ:位相をいじったら、そういう風になる、っていうのが
   段々と判って来たんやろね。
   でも動かせるのは前後左右だけ。
   上下にはまだ判っていない事が多いみたい。
 
つる:…(頷)
 
きさ:な・の・に…
 
(音像の定位2に続く)