(【ワンポイント録音の噺:1】からの続き)
つる:マルチ録音は…確かにバラバラにきこえますねぇ…
友人の歌手してる人も、
「最終確認は、ラジカセでするよ。
ラジカセで聴いてよく聞こえるのでGOしちゃう」
って言ってましたしねぇ…。
きさ:でもそんなんを、マトモな機器で聞いたら
口だけ大きいオバケみたいやったり、
ぺらぺらの団扇が泳いでるだけにしか聞こえへんねん。
立体感も奥行きも、全然ないねん。
せっかく「何かが降りてくるような」演奏してても、やで?
勿体ない!!
後世に残すべき遺産が…残せへんねん。
どれだけ無駄にしてることか。
つる:…流れて、消えちゃう。
きさ:そう。
このぺらぺらの団扇っていう話しが、
さっき言うた「千円札は、千円」っていう話しやねん。
なんぼ精巧に刷っても千円は千円。
ガリ版刷りしても千円は千円。
欲しいのは「千円」でしょ?
つる:ほんとうに欲しいところ、は、そこですね。
きさ:今の技術でマルチ録音してるのは、
無駄なことをしてはるね。
つる:ワンポイント録音っていうのは…
きさ:二本のマイクでこう…
上からぶら下げて録ってるやつ。
クラッシックのオーケストラ録音とかでよくしてるよね。
つる:ああ…見たことあります。
こう、上の方から吊ってあったりして、
それぞれの楽器にマイク1つずつ、じゃなくて、
ぜーんぶ、で録る。
きさ:何が難しいって、マイクが2本しかないから
遠いところの音とか録りにくいやろ?
バランスの調節が難しい。
人間が動かなあかんねん。
…むずかしい。
つる:…録るのが。
きさ:うん。
人間が便利になってきたら
こねくってオカシクなってきたんと一緒やろ?
便利なように、
失敗無いように、
録りやすいように…って色々してたんやけど
「ほんとうにイイもの」が録れてないねん。
つる:…ふ〜む…
便利さを求めるが故に
ほんとうに欲しいところが録れない…
頑張ってるのに、徒労に終わっちゃってる…
きさ:そう!
つる:無駄に無駄なことを頑張ってる…
きさ:ほんで、残らへんねん。
つる:どんなにイイ演奏をしてても…
きさ:せやから1960年代に録ってる
ほんまにステレオの音の方が、イイねん。
立体感もある。
つる:うん(頷)
きさ:…今のは、全然ない。
つる:う〜ん………確かに…
加工されてるのが、
ありありとわかりますもんね。
きさ:そんな変なモノを、どんなに精密に再現したって
「変なモノ」でしかないわけ。
こねくったモノの再現、やから。
そんなペッチャンコのもん再現しても、
意味無いと思うねん。
つる:…いくらプロのコックでも、材料が悪ければ
「それなり」の料理しか作れない感じですね。
Ge3 Lifeでしてる石けん作りの噺と全く同じ!
きさ:うん。だから、こねくったら、あかんねん。
(【暗騒音の噺:1】に続く)