【ワンポイント録音の噺2】ワンポイント録音とマルチ録音

 
つる:マルチ録音は…確かにバラバラにきこえますねぇ…
   友人の歌手してる人も、
   「最終確認は、ラジカセでするよ。
    ラジカセで聴いてよく聞こえるのでGOしちゃう」
   って言ってましたしねぇ…。
 
きさ:でもそんなんを、マトモな機器で聞いたら
   口だけ大きいオバケみたいやったり、
   ぺらぺらの団扇が泳いでるだけにしか聞こえへんねん。
   立体感も奥行きも、全然ないねん。
   せっかく「何かが降りてくるような」演奏してても、やで?
   勿体ない!!
 
   後世に残すべき遺産が…残せへんねん。
   どれだけ無駄にしてることか。
 
つる:…流れて、消えちゃう。
 
きさ:そう。
   このぺらぺらの団扇っていう話しが、
   さっき言うた「千円札は、千円」っていう話しやねん。
   なんぼ精巧に刷っても千円は千円。
   ガリ版刷りしても千円は千円。
   欲しいのは「千円」でしょ?
 
つる:ほんとうに欲しいところ、は、そこですね。
 
きさ:今の技術でマルチ録音してるのは、
   無駄なことをしてはるね。
 
つる:ワンポイント録音っていうのは…
 
きさ:二本のマイクでこう…
   上からぶら下げて録ってるやつ。
   クラッシックのオーケストラ録音とかでよくしてるよね。
 
つる:ああ…見たことあります。
   こう、上の方から吊ってあったりして、
   それぞれの楽器にマイク1つずつ、じゃなくて、
   ぜーんぶ、で録る。
 
きさ:何が難しいって、マイクが2本しかないから
   遠いところの音とか録りにくいやろ?
   バランスの調節が難しい。
   人間が動かなあかんねん。
   …むずかしい。
 
つる:…録るのが。
 
きさ:うん。
   人間が便利になってきたら
   こねくってオカシクなってきたんと一緒やろ?
 
   便利なように、
   失敗無いように、
   録りやすいように…って色々してたんやけど
   「ほんとうにイイもの」が録れてないねん。
 
つる:…ふ〜む…
   便利さを求めるが故に
   ほんとうに欲しいところが録れない…
   頑張ってるのに、徒労に終わっちゃってる…
 
きさ:そう!
 
つる:無駄に無駄なことを頑張ってる…
 
きさ:ほんで、残らへんねん。
 
つる:どんなにイイ演奏をしてても…
 
きさ:せやから1960年代に録ってる
   ほんまにステレオの音の方が、イイねん。
   立体感もある。
 
つる:うん(頷)
 
きさ:…今のは、全然ない。
 
つる:う〜ん………確かに…
   加工されてるのが、
   ありありとわかりますもんね。
 
きさ:そんな変なモノを、どんなに精密に再現したって
   「変なモノ」でしかないわけ。
   こねくったモノの再現、やから。
 
   そんなペッチャンコのもん再現しても、
   意味無いと思うねん。
 
つる:…いくらプロのコックでも、材料が悪ければ
   「それなり」の料理しか作れない感じですね。
   Ge3 Lifeでしてる石けん作りの噺と全く同じ!
 
きさ:うん。だから、こねくったら、あかんねん。
 
 
 
(【暗騒音の噺:1】に続く)