■ ”鬼太鼓座”を薦める訳
Ge3ではオーディオ的なお薦めCDとして鬼太鼓座を挙げていると、
僕が「太鼓フェチ」だと思われていると感じるコトがままある。
どうでも良いのだが、すこし違うって話をすることにした。^^;
Ge3で薦めているのは「鬼太鼓座”怒涛万里”」だけである。
他のCDも悪くはないと思うが、Ge3的には他のCDでは意味がない。
「鬼太鼓座」が好きかどうかは好みの問題で、それについて語るつもりは無いので、宜しく。^^;
では怒涛万里のどこがGe3的に意味があるのかを説明したい。
■ 200年モノの吉野杉が倒れる音
10年以上前になるが、吉野の山で「木を倒すので見ないか?」と誘われたことがある。
「200年ものの吉野杉を数本倒すから見に来ないか?」とのお誘いだった。
200年ものの吉野杉と言えば太さも1m以上あって、滅多には切らない貴重な樹だ。
それを倒すところに立ち会えるのは非常にラッキーだと思った。
そしてそれは間違いでは無かった。
生録マニアの端くれであった私にとって、大木が倒れる時の音は録音したい音の筆頭であった。
でも、中々 叶わなかった事のひとつでもあった。
実際に傍で聞くと、それは信じがたい音だった。
想像していた音とは全く違っていた。
それは「樹の叫び声」そのものだったのである。
200年以上、自らを支えてきた樹の筋が、1本、1本、引き千切られる音なのだ。
数千本、数万本mの繊維が引き千切られる音は「樹の叫び声」にしか聞こえない。
ホンモノの銃声を聞かれたことがあるだろうか?
それは「ズキューン」とかの映画やTVで聞くような重々しい音では無く、極めて軽い乾いた音である。
ホンモノを聞くとガッカリしてしまう人も多いと思うが…
音速に近い速度で飛ぶ弾丸は、かすめるだけでミミズ腫れを起こす程である。
それでも実際は「パン」と云う乾いた音にしか聞こえない。
そんな音とは違って、吉野杉の倒れる音は空気を”つんざく”炸裂音と言うものがあるとしたら、吉野の山で聞いた音がまさにそれだと思う。
200年モノの吉野杉が倒れる音と「かすめる弾丸の音」が似ているところは、「ビュシッ」と空気をつんざく音である。
樹が倒れるまで数秒の時間がゆっくりと流れるが、幾千、幾万本もの繊維が引き千切れる音が「ビュシッ、ビュシッ、ビュシッ」と倒れるまで、それは続くのである。
オーディオ的には「花火の録音と再生は難しい」とは良く聞く話が、この樹が倒れる時の音はその比ではなかった。
吉野杉が倒れる音や、肌がミミズ腫れになるような音は、録音も再生も無理だと思うほどに、音のインパルスが強烈過ぎるのだ。
しかし、この「鬼太鼓座”怒涛万里”」には、それに近い音が録音されている。
■ 鬼太鼓座が最適な理由
脳内シュミレーションに向いている
鬼太鼓座を聴き出したのは偶然である。
オーディオ雑誌で紹介されていたので、何気なく買って聴いたのが始まりだ。
最初は「こんなモノだ。」と思って聞いていたが、
そのうち自分のシステムが「この程度の音なのか?」と疑問を持つようになって来た。
太鼓の皮が打たれると「どうなって、こうなって、ああなる。」など、
本来出て来るであろうべき音を想像して妄想するのである。
言うならば「脳内シュミレーション」を勝手に始めた訳である。
この手法はSP周辺からのチューニング方法を考える上で非常に強化的だった。
和太鼓の激しいインパルス成分を持った音がSPから出る瞬間からを想像すると、
問題点と必須と思える対策のアイデアが湧いてくるのである。
このアイデアを引き上げるパワーが「鬼太鼓座の怒涛万里」には特に強くあるように思える。
それで「鬼太鼓座、鬼太鼓座…」と呪文のように語り始めた訳である。^^;
このオーディオの「脳内シュミレーション」にうってつけなのが「鬼太鼓座の怒涛万里」な訳である。
Ge3的基準信号
オーディオ機器の開発者達が測定には実際の音楽ではなく1kHzとかの単音を基準に良く使う。
それに似てJAZZやクラシックの音を基準に使うと、音が複雑過ぎて良く判らない。
多くの和楽器にはインパルス成分が非常に多い。
和太鼓や笛、三味線などの音は特にキレが良く、音の立ち上がり、立ち下がりが厳しく、録音も再生も難しい訳で、良くなった時の違いが判りやすいのである。
それが「脳内シュミレーション」向きだと思う所である。
byきさ
(続く)