黒アゲハ開発秘話

新コーナー!「オーディオ的上耳噺」がスタートします!
第一回目は、きさ@Ge3が最初に作った製品である
黒アゲハ」の開発秘話をお届けします。

きさ:黒アゲハは、麻紐をぐるぐる巻きにしてテープで挟んだものやね。
スピーカーのコーン紙に直接貼ると効くねん。
貼るとコーン紙の強度が上がって不要な音が消えてスッキリする。
と同時に聞こえなかった音が聞こえるようになる。
麻紐のこすれ合う摩擦を利用して音の波に揺すられる時だけこすれるから、
抵抗が生じて一見硬くなったように見えるねん。
周波数が低いとコーン紙は並行移動するだけなので抵抗せず、
高い周波数(分割振動)の時だけ抵抗が生じる訳。
なんとなく、わかる?

なゆ:はい、わかります。

きさ:生じる抵抗力に比べると麻紐は軽いので、
振動そのものにはあんまり影響を与えないんよ。

   コーン紙の強度を上げる方法を考えていた頃、
知人が麻布をスピーカーの箱に貼ると、音がすっきりするコトを発見した。
最初は良くなる理由が分からなくてね。
随分長い間、考えていたんやけど、ふと「摩擦だ」と気がついた訳。
それで徹底的に探索して、オーディオ的には麻紐の摩擦が最適だった。

   でも、いろんなところで誤解されていてね。
「そんなもの貼ったらコーンは重くなって
低音が増えるのは当たり前!」ってね。
この手の思い込みは多いよね。今でも多いけどね(笑)
「コーン紙に十円玉を張ると低音が増える!」なんて言ってた
評論家がいたので、それと一緒だと思ったんやろね。

   そもそも僕は、低音増強なんてのは求めていないし。
   黒アゲハの目的は、高音の立ち上がりを良くするためやからね。(笑)

   オペラなどを聴いていると、ソプラノの絶叫など
「パキンパキン」と妙な音が聞こえる訳。
凄いソプラノの絶叫にスピーカーが負けて
コーン紙が折れるような音になるみたい。

   古い録音だったし「そういう音が入ってるのかな?」とも思ったけど、
「黒アゲハ」を施工して聴き直すと治る場合が多いので
コーン紙がへたっていると思うよ。

なゆ:ほぉ・・・そうだったんですね。

きさ:Ge3では「鬼太鼓座」を試聴に良く使うやんか。
あれ、直径1m50cmのデカイ太鼓を思っ切り叩くんよね。
僕が「鬼太鼓座」を使うと「低音が好きですね」なんて
よく言われるけど、完全にステレオタイプやと思うよ。

   和太鼓は音の立ち上がりと立ち下がりが激しいので
試聴に最適だと思っている訳。
「音の立ち上がり、立ち下がり」には
高周波成分が多いので再生が難しいねんw。
特に日本の和楽器は、高周波成分がとにかく多い楽器が多いね。
太鼓にせよ、笛にせよ、弦楽器にせよ。

なゆ:へぇ〜、そうなんですね。

きさ:和楽器は「音の立ち上がりと立ち下がり」が
激しいのが多くて、録音が凄く難しい。

   それに比べて西洋楽器の多くは録音しやすいかもしれない。
ピアノは難しいけどね。あれは打楽器やからねぇ。
何度も言うけど日本の楽器は
「立ち上がりと立ち下がり」が厳しいものが多い。

なゆ:日本の楽器以外ではあんまりないんですか?

きさ:日本も含めて、東南アジア圏には多い気がするね。
バリ島の竹の楽器なんかは、やっぱり近い音があるね。
ケチャってのは録音も難しいし非常に激しい音があると思う。

   昔ね、吉野の山で2mくらいの木を倒すところを見学したことがあってね。
そらものすごい訳ですよ。
200年の間、木を支えてきた繊維が
「ビッシュ、ビッシュ」って切れて倒れるねん。
その繊維が切れる音は悲鳴みたいで、
ほっぺたが切れる感じがするほどやねん。
あの時の音をオーディオ装置で出したいっていうのが、僕の基本やね。
それはめっちゃ難しいから、みんな避けて来たらしいw。
僕はそんなの知らんから、そこに「まっしぐら」やね。(爆)

なゆ:おぉ!突進したんですね!!(笑)

きさ:そんで「鬼太鼓座」の音に
その「頬が切れる」のを感じて試聴に使い出してん。
その音をスピーカーで出そうとした途端スピーカーが負けるわけよ。
「Doon!」っていう瞬間の音を再現できなくて、「ドーン」ってなる。
立ち上がりがヘナってから「ドーン」が来る。
「ドーン」って感じしか出ない。

   最初の瞬間の音を出すために、黒アゲハを作ったんやけどね。
最初の一瞬だけ耐えてくれたらいい。
「軽いけど一瞬だけ硬くなる」っていうのが
僕の求めるスピーカーの性能やからね、
それを実現するのに黒アゲハはすごく役に立った。

   加速度を上げるためには重量を増やしたらアカンやろ?
軽ければ軽いほど加速度が稼げるからね。

   軽いけど特定の周波数に対しては
強い抵抗を示すモノとして作ったのが黒アゲハやね。

   最初に作った製品は、そういうヘンテコな「黒アゲハ」ですw。
ほとんどの人は未だに信用してくれないし、
メーカーに至っては全く関心ないでしょう。

なゆ:信用しないっていうのは、
黒アゲハを使ってもないのに否定してるんですか?
試してもないのに「ダメでしょ!」ってコトですか?

きさ:うん。いろんな開発に携わってる人ほど、そうやね。
「そんな訳ないやろ!」って人が、だいたい8割かな。

なゆ:えぇっ!それも8割なんですか。

きさ:「そんなものコーン紙に貼ったら重くなる」って言われるけど、
現物は重くない。
理屈を説明すると、本当に賢い人は理解してくれるけど、
8割の開発者は理解しない。
評論家も同じで、半分くらいは判らないみたい。
現物を見ても重くないから「効果も軽い筈」って思い込むみたいやね。
黒アゲハの効果はフラシボーだと思ってるみたいよ。

なゆ:実際に軽くて効くのにわからないっていうのが、
私にはよくわかりませんけどねぇ。

きさ:「計算してみろよ!」って話やん。
計算してみたら、加速度がどれくらいのもので、
どれだけのものが必要なのかすぐに判るコトやけど計算しない。
計算するまでもないと、拒否する。言うこと聞かない。

なゆ:へぇ〜…(苦笑)

きさ:僕の言うこの妙な話をまともに聞いて、
「わぁ!すっげぇ!」って言ってくれるのは2割。
そこから本当に計算して開発に入ってくれるのは、
2割のうちの5%ぐらいやねん。

   今まで色々なメーカーの人に会ったけど、
僕が作ったスピーカーでは効果が聞き取れるのに
「うちのところのSPには効かないやろう」って言う人が大勢いたよ。
「おたくのスピーカーにも黒アゲハを貼って強度を上げてみては?」
って言ったら、「うちのが悪いんか!」なんて怒ったりしてね。
なんでやろね? 不思議やね。

なゆ:うーん、本当によくわからないですね(苦笑)

きさ:うん。よくわからない。本当に頭が悪いの?と思いたくなる。
「ちょっと脳みそ見たろか?!」って思うよ。
オバサンの井戸端会議みたいな感じで、話が拡散してゆくねん。

なゆ:(笑)

きさ:麻紐のこすれるところぐらいで強度が得られるわけないって言うけど、
それを計算しろよって思う。
ロープは何であの形を保てているの?
布はどうして布で居られるのか?
筋肉はどうして力が出るの?
切れた筋肉はどうして繫がるの?

   考えろよ! 計算しろよ!って言いたいよね。

なゆ:そうですね。

きさ:まぁ、そんなふうにしてできたのが黒アゲハ。
原料費も安いから、Ge3が作るにはちょうどよかったよね。
でも、かっこわるいよね?絆創膏みたいで。

なゆ:そうですかね?私はかっこわるいとは思いませんよ。

きさ:まぁ、気にする人はコーン紙の裏に貼ったら良いからなぁ。
コーンに貼るのを嫌がる人がいるけど、
そういう人はリセールバリューを気にする人たちが多いと思うよ。
次に売る時に高値で売りたいような人たち。
その点、Ge3ユーザーはかなり特殊やね。
みんな高いスピーカーでも貼ったりする。

なゆ:私もあんまりリセールバリューとか気にしないですね。
効果があるなら貼ってもいいじゃんって思うんですけど。
貼っていい音になるなら、そのほうがいいですもん!

きさ:うん。
Ge3の製品は、別に変なデザインが好きで、
変なデザインにしてる訳じゃないけど、
おかしなデザインは多いよね。(爆) でも機能を優先すると仕方ない。
そこから考えて、次第に良いのに変わっていくっていうのはあるけどね。

   今の大地を見たことあるでしょ? あの赤いやつ。
あれは最初のバージョンなんて鉄板だけやったから、
かっこわるいとは思わないけど変なものやった。(笑)
今のはバージョン6ぐらいだから、見栄えよくなったよね。
要石25あるやんか。
それも初期の要石は、ほんまに「ウ●コの化石」やった。

なゆ:(爆笑)
それ、写真で見たことあります。

きさ:作りながら「こんなの売って良いのかよ?!」って
言いながら作ってw(笑)
でもアレ、500個ぐらい作ってすぐ無くなったよ。
500個作っては無くなって、また500個作っては無くなって。

   話が逸れたけど、とにかく目指したのは、
立ち上がりの激しい音に耐えるコーン紙のスピーカが欲しかった訳で…

   最近は、黒アゲハが必要ないほど、
コーン紙の強度は向上していると思ってる人が多いみたいだけど、
世の中にあるスピーカーの95%は今も必要だと思うよ。
正しく利用すれば、正しい強度が得られる技術は、
悲しいかなコストダウンに使われてしまっているよ。
結局、開発者が聞こえないんだと思うw。

(終)

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