■アッシャーS520をGe3的にチューンする
1月17日の「アッシャーS520をGe3的にチューンする」(3月号79頁)が余りに面白かったので、今回(3月21日)もエンゼルポケットをのぞいてみた。
ホーッ。あの鈴木哲氏の傑作、マランツ・プロMZ−S01が、江川先生のジルコン・スタンドの上にのっかり、信じられないほど優美な音楽を奏でている。足元には三角インシュレーター「菱餅」の姿も。
「このスピーカーって、もっと粗野な音だったわよね」
こういうことだけ覚えているのがウチの奴の取り柄だ。
「粗野なんてこと言うと、悪いように誤解する人がいるでしょ。せめて『ワイルド』(爆)って言いなさいよ。しかし、今出てる音はすごいよね。そのうるさめなところが、見事に消えちゃってるもの」
こういうとき、ジョーン・サザーランドが歌うベッリーニ「ノルマ」をかけるところが きささんの稀有なところ。
「僕はね、このCD(デッカのオペラ・アリア集・60年代録音中心)をチェック用によう使うんですよ。最初、こういう音楽には全然興味なかったんやけど、Ge3的なチューンを押し進めて行くと、どんどん魅力的な音楽になってく」
ううん。確かにそうかも。日本ではメチャクチャ評価の低いサザーランドだが、それは大御所オペラ評論家宅のオーディオ装置に問題があったからではないかと、ボクは疑っている。
「今、このスピーカーは何も処理してないんですか?」
「いえ。今は、マグネットとフレームに『茅蜩(ひぐらし)』貼ってあります。やったことある人はわかると思うんですけど、これだけは先にやっとかんとあかんのです。貼った直後はユニットが嫌がるんですよ。
『何やこれ? 俺の背中に妙なもんがくっ付いとる。剥がしてくれ』ていう感じで、一時的に低音とか全然出んようになる。ユニットが観念して、『茅蜩』を受け入れるようになるまで、平均して4日はかかります(笑)」
ここで羽田さんは、写真を取り出し、「こんな風に貼ってあるんです」と実にわかりやすく説明してくれる。
「吸音材はすべて取り除き、リプトン紅茶のティーバッグをぶら下げてあります。どういうワケか、リプトンやないとあかんのです。それもピラミッドみたいな形のやつ。お茶っ葉はそのまんまでええです。音は変わりません」
ホ、ホントに!?
「内部配線とかはいじってないんですか?」
「あっ。それも忘れてました(爆)。線材は換えてないけど、あちこちに『蛍イカ』という制振グッズを貼り付けてます」
会場では、《Ge3グッズ貼り付け隊》の皆さんがすでに待機中。これから、いよいよ「黒アゲハ」(ピストン運動を妨げず分割振動だけを抑えるグッズ)の貼り付けが始まる。
「ウーハーには、十文字に4つ。このスピーカーの場合は、これで充分です」
ううん。さすがに《貼り付け隊》を名乗るだけあって、貼り方がうまい(この手の改造は、不器用な人がやるとメチャ汚くなっちゃうからね。ボクもこれ使うときは《貼り付け隊》にお願いしよう)。
そして、さっきと同じサザーランド。次に鬼太鼓座(おんでこざ)をかける。
「こ、こんなに違うものなの!?」
「そうか。お前は1月の第1階イベント来てないもんな」
「さっきは聴きやすい音ではあったけど、芯がボケてたわ。まるで印象派の絵画みたいに。それが今はビシッとピント合ってる」
「でしょ」
そして、次はツィーターに「琴引(ことひき)」を貼る。——ううん。これもすごい。ビシッとピントが合ったところはそのままに、そこから無限のニュアンスが湧き出してくるのだ。「音がほどけて来る」と言い換えても良い。
しかし、ここで会場から厳しい指摘も出た。「ウッズトーク」7曲目をかけたとき、顔にバチバチ当たって来るエネルギーがちぃと弱いのではないか、というのだ。
「クラシックしか聴かない人ならこれでいいと思うんだけど、JAZZ、ロック、ポップス系を聴く人には、ちょっと『まとめ過ぎ』『抑え過ぎ』じゃないの?」
ここで、羽田さんおもむろに立ち上がり、
「そういう人のために、徹夜で新製品を作って来たんですよ。『黒アゲハ』の元気バージョン。名付けて『テレ・サテン』。絹でできてるから『サテン』なんです。テレサ・テン(爆)じゃないですよ」
《貼り付け隊》は《貼り換え隊》でもある。コーン紙に貼り付けた「黒アゲハ」をていねいに剥がし、「テレ・サテン」を貼り付ける。
出て来た音は、ホントにもう笑っちゃうしかない。「ウッズトーク」7曲目の強烈かきむしりベースが顔に痛い!! いてててて。
マランツ・プロS01にこれらGe3グッズをすべて足しても、せいぜい10万円。しかし、それで得られる音は、ペア50万クラスを楽々凌駕する。いや。ひょっとすると、ペア100万クラスだって勝てないんじゃないか?
第3回のイベントがいつどこで行われるのかは知らないが、情報を聞きつけたら何をほったらかしても参加されることをお勧めする。Ge3的フルチューンの衝撃を、ぜひあなたも。