施工例:DENON SC-900(堺・高橋さん編)

2003/4/20

高橋翁のDENON SC−900をチューン! 翁の納得は得られるか!

今回、ヒグラシ・黒アゲハ 貼付隊・関西小規模部隊(僕と家内の2人だけ)は大阪は堺市にお住まいの超ベテラン・オーディオマニア、高橋翁の館へ出撃してきました。

■はじめに

左の写真は対策前のSC−900です。
戦歴の傷跡が物語るように、かなり使い込まれています。
しかし、これが実に良く鳴っているのです。
普通だったら「良い音ですね。」の一言で帰ってきてしまう位のレベルの音なんですが、高橋氏は満足していないらしいのです。
ここまで追い込んだ氏のバランス感覚は尋常ではありません。氏に納得してもらえるチューンは難しいかも知れませんが、いざ挑戦です。

■各種チェック

まずはマンハッタン・ブルーで低域バランスのチェックです。このCDのバスドラムとウッドベース、どちらが良く聞こえるかで低域の特性がかなり判ります。
非常にスムースに最低域まで音として出せているようです。DENONも頑張っていますね!
次は、定番のフラメンコのCDでチェックです。
このCDでは主にダンサーの足踏みに注意して聴くようにしています。床の固さ、ダンサーの体重、そして舞台の高さを聴きます。低域がもたついていると床が 固いのか柔らかいのかさっぱり判りません。そしてギターも生々しさにも要注意です。ダンサーの足踏みの音が手拍子より高かったりすると、これは問題です よ。
うむ、これも、見事ですよ。
そして難関のソプラノです。
おお、ffで完全に割れてしまいましたね。先ほどまでの冷静な音ではありません。ツイータに問題ありです。綺麗な音なのですが、何かが許容入力について行っていません。
ある音域で完全に腰砕けになってしまいます。
最後に鬼太鼓座を聞きました。
僕は太鼓の皮が薄くて乾いいて強いテンション張られている感じを聴きたいのです。これには広い範囲の倍音を正確に再生する性能が必要なようで、なかなか再現できる装置に出会うことができません。でも、一発でチェックするには絶好の楽器だと思っています。
このSPで聞く鬼太鼓座は量感は充分です。でも、分解能においては及第点レベルですね。レスポンスも甘く、大太鼓の大きさがさっぱり判りません。部屋中が太鼓の中になったような鳴り方です。

ウーファのエネルギーを効率よく音に利用できるようにヒグラシを2個貼り付けました。
これにより振動が音として前に前に出て行く事が可能になります。
不要な振動として反射を繰り返す事も少なくなり、強いインパルス性のエネルギーも難なく跳ね返してしまいます。
結果として、エンクロージャの不要振動や共振が大幅に減少し、吸音材の減少および完全撤去に進むことが可能になります。
2個とも同様にしました。
他にドロンコーンが付いているのですが、それには何も手を加えません。
お決まりの吸音材の撤去です。
ぐちゃぐちゃ言ってないで完全撤去です。(爆)
こんな感じです。
ホントに吸音材が無いでしょう?
もちろん、ここで見えている吸音材も取ってしまいます。
これがツイータです。
マグネットを見て判るように、かなり気合いの入ったツイータです。
ところがホーンがプラスティックです。
これがいけません。
各箇所で泣きまくっています。
コンピュータによるシミュレーションでは、これで良かったのでしょうか?
ツイータに琴引を貼るために分解中です。
中央にイコライザーが見えますが、これもプラスティック製です。音響エネルギーに耐えられるとは思えませんね。
実際ソプラノでは鳴きまくっていました。(笑)
ホーンの首に黒アゲハ1/2を貼りました。
簡単な振動対策です。
外して振動板をむき出しにしたところです。
かなり薄い振動板です。設計者の気合を感じますよ。
でも、この薄さがソプラノの泣きに関係する気が...
ボイスコイル周辺には磁性流体が塗布されていました。
熱対策・許容入力にも、出来ることはやっている感じです。
振動板に小の文字状に琴引を張ります。
※ウルトラマンの顔とも言います。(笑)
エッジに接触しないように注意して、小さめのサイズで貼り付けます。
結局、ツイータのフレームには黒アゲハ1/2を2カ所に貼りました。
黄緑色の矢印がそれです。
ウーファーには黒アゲハ1/2を放射線状に4枚張りました。そして中央のドームに琴引を張りました。
やはりエッジには触れないようにしてあります。
琴引同士やエッジとの接触は厳禁です。貼り付けが上手く行かなくて、一部が浮き上がっている状態も駄目です。そこが振動して音を濁らせてしまいます。
ツイータのマグネットは大きいので、ヒグラシが2個必要です。
エンクロージャの内部はこの様に何も入っていません。
ただし、黒アゲハを前後左右のバッフルに2枚づつ貼りました。
これはバッフルの振動対策が目的です。
多少定在波が残るかも知れないので、吸音材の代わりにリプトンのテトラパックを4つ中にぶら下げてました。
これは、ホント馬鹿馬鹿しいほどの効果があります。
中の葉っぱは入れたままです。
取り付けが完了したユニット達です。
高域専用の芋蔓ジャンパーを今回も使いました。
Ge3改造が完了したSC−900です。
色々なモノを取ったせいもあり、すっきりした感じになりました。(笑)
ちょっとだけ聴いた感じでは、ソプラノはつぶれ無くなりました。切れますよ。(爆)
太鼓はまだまだですが、本式のチューニング結果は4日以上経ってから、ご本人にお願いするとします。
関係ありませんが、部屋の隅に置いてあったモノです。(爆)

 

SC-900のオーナの高橋さんから、感想が届きましたので掲載します。

無限の可能性の広がる革新の一日

Ge3との出会いは2003年3月初旬、ひょんな事から銀蛇と芋蔓をモニターした事が始まります。

ちょうどその時、私はAVビレッジ誌で話題のX処理SPケーブルを入手し、その音質改善に驚いていました。そのX処理でも充分満足だったのですが、銀蛇、芋蔓のエージングが進むにつれ「これはただ者では無い」との衝撃を受けました。

今まで、雑誌等で推薦されるまま数々のアクセサリー類に手を染めて来ましたが、これ程の興奮は初めてです。
ボリュームを上げるにつれ、音は崩れる事無く、益々、立体感と奥行きを増して行くのです。

その後4月20日にはGe3貼付隊に来て貰う事となりました。SPのチューンアップを依頼したからです。

チューンアップ対象のSPはDENONのSC−900です。このSPは今から13年くらい前、MJ誌でK氏が賞賛されていた記事に共感し求めたモノです。 TWと中低音ユニット2個、ドロンコーンからなり、充実した低域と高級なホーン型TWが売りのSPでした。特にTWはK氏が絶賛されていたのを良く覚えて います。

私のオーディオ歴は35年くらいで、その間SPはタンノイ、マグネバン、スペンドール等で、現在はスペンドールとこのDENONを良く聴いています。自己流ですが内部配線と吸音材は変更してそれなりの成果を上げていました。

貼付隊による作業自体は手慣れた感じで一見簡単そうです。でもユニットが多いので半日作業でした。 先ず、SP内部の吸音材を全部取り出してから、黒アゲハ、ヒグラシ、琴引をそれぞれのユニットに装着して、リプトンのティバックをぶら下げて完了です。

今回はドロンコーンには手を加えないとの事です。

貼付隊には「音が落ち着くまで数日かかる」と脅かされていたのですが、意外にも作業直後の音でも、素晴らしいの一言に尽きました。 私は更に菱餅を加えました。
菱餅とシステムとのエージングが進むにつれ、3日目位からですか、私の求める理想の音に近づいて来ました。それは私のオーディオ同士と常に言っているヘッドフォンの音(私の場合はビクターHP−D1000)をリスニングルームに再現すると言うことです。

私の好みは弦楽器ですが、今回のチューンでバイオリンの弦の擦る音、倍音、胴鳴等が生々しく再現される様になりました。本当に今まで何をやっても成果が出ず「部屋が悪いから...」と諦めていたのです。

また、相乗効果と言うのでしょうか? 今まで音のためにトライしてみたけれど、今ひとつ納得できていなかった事が確認できるようになってきました。
例えば、アース棒です。家を建てるときに電気屋さんに勧められるまま、直径1cm長さ1mの銅棒を2本も土地に埋めたのですが、その効果は?と言うと、 さっぱり判らないのが本音でした。 でも、今回のチューン後、それが判るのです。全く違うのです。やっとその効果を確認できたしだいです。

今後もオーディオマニアの習性として試行錯誤を続けるかも知れません。でも、これで1つの土台が出来たと考えると安心です。

で、次のトライは...と、浮かれているのです。

2003.6.3 高橋定男